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千葉地方裁判所 昭和37年(わ)344号 判決 1969年1月14日

主文

被告人加瀬俊雄を懲役一年に処する。

被告人鈴木栄治郎を懲役六月に処する。

被告人日東寺俊雄を懲役六月に処する。

被告人大木大輔を懲役六月に処する。

被告人中嶋与を懲役六月に処する。

被告人能勢剛を懲役六月に処する。

被告人椎名登を懲役三月に処する。

被告人市原正利を懲役二月に処する。

被告人鈴木勝を懲役二月に処する。

被告人らに対し、いずれもこの裁判確定の日から三年間右各刑の執行を猶予する。

被告人中嶋与から二〇万円を、被告人椎名登同市原正利同鈴木勝から各一万円を、それぞれ追徴する。

訴訟費用中、証人八角喜久夫同市原茂雄同行木一郎同斎藤要同太智正一郎同大藤源三郎同小川潔同実川堅司郎同早川公平に各支給の分を二等分し、その一を被告人椎名登に負担させ、証人古川歌子同中古君枝こと佐々木君江同花沢満同布留川正輔同石井周同相川磐根同浪川尚介同石井昌平同伊藤績夫同押尾光雄同川口敏郎同高橋清男同吉岡豊に各支給の分を被告人市原正利同鈴木勝に連帯負担させ、証人重吉昇に支給の分を被告人加瀬俊雄同鈴木栄治郎同中嶋与に連帯負担させ、証人桜田盈一同外山政雄に支給の分を被告人鈴木勝に負担させる。

理由

罪となるべき事実

被告人らは、いずれも昭和三七年七月一日施行の参議院議員選挙に際し千葉県地方区から立候補した議員候補者鈴木績の選挙運動者であるが、

第一、被告人加瀬俊雄同鈴木栄治郎は、共謀のうえ、右候補者に当選を得しめる目的をもつて、右立候補届出(同年六月七日)前である同年六月初めごろ、被告人中嶋与の肩書住居において、同被告人に対し、右候補者のための投票取纏め等の選挙運動を依頼し、その報酬等として現金二〇万円を供与し、

第二、被告人加瀬俊雄同日東寺俊雄同大木大輔は、右候補者鈴木績と共謀のうえ、同候補者に当選を得しめる目的をもつて、右立候補届出前である同年五月中旬ごろ、同県佐倉市鏑木町六八番地木倉和一郎方において、右候補者の選挙運動者である右木倉に対し、同候補者のための投票取纏め等の選挙運動を依頼し、その報酬等として現金二〇万円の供与の申込をなし、

第三、被告人加瀬俊雄同能勢剛は、右候補者鈴木績と共謀のうえ、同候補者に当選を得しめる目的をもつて、右立候補届出前である同年五月下旬ごろ、同県山武郡九十九里町真亀四、〇〇五番地桜井熊雄方において、右候補者の選挙運動者である右桜井に対し、同候補者のための投票取纏め等の選挙運動を依頼し、その報酬等として現金二〇万円を供与し、

第四、被告人加瀬俊雄は、

一、右候補者鈴木績と共謀のうえ、同候補者に当選を得しめる目的をもつて、右立候補届出前である同年四月一二日ごろ、同県東金市東金一、四〇六番地割烹旅館株式会社八鶴館において、右桜井熊雄に対し、前同様の趣旨で現金一〇万円を供与し、

二、吉岡貞三郎と共謀のうえ、右候補者に投票を得しめる目的をもつて、右立候補届出前である同年五月二二日ごろ、

(イ)同県山武郡横芝町横芝一、〇九四番地池田喜千平方に右選挙の選挙人である同人を訪問して右候補者への投票を依頼し、

(ロ)同町本町九九五番地の一八古川暹方に右選挙の選挙人である同人を訪問して前同様依頼し、

(ハ)同町横芝所在の石坂善新堂横芝工場に右選挙の選挙人である千本松光雄を訪問して前同様依頼し、

以て戸別訪問をなし、

三、同年六月一九日ごろ、同県千葉市吾妻町三丁目一一番地所在の千葉県建設業協会(会長鈴木績、専務理事加瀬俊雄)において、同協会作成名義の

お願いですが会員各位におかれては友人知己のこれなればという人々に「鈴木績」支持の自筆親展信書を廿通以上お出し下されたく御依頼申上げます

などと記載した文書を作成し、公職選挙法第一四二条の禁止を免れる行為として一覧表宛名人欄記載の者に対しその住所欄記載の住所宛に右文書を一通宛千葉市内の郵便ポストに投函郵送して到達させ、以て右文書を領布し、

第五、被告人中嶋与は、同年六月初めごろ、自己の肩書住居において、被告人加瀬俊雄同鈴木栄治郎から第一記載の趣旨で供与されるものであることの情を知りながら現金二〇万円の供与を受け、

第六、被告人椎名登は、

一、同年四月一二日ごろ、前記八鶴館において、前記桜井熊雄から、右候補者に当選を得しめる目的をもつて、同候補者のための投票取纏め等の選挙運動を依頼され、その報酬等として供与されるものであることの情を知りながら現金一万円の供与を受け、

二、右桜井熊雄と共謀のうえ、右候補者に当選を得しめる目的をもつて、右立候補届出前である同年五月二八日ごろ、同県山武郡横芝町横芝一、五一八番地料理店兼旅館富士屋こと林山方において、右選挙の選挙人八角喜久夫同市原茂雄同行木一郎同斎藤要同太智正一郎同大藤源三郎同小川潔同実川堅司郎同早川公平に対し、それぞれ、右候補者のための投票及び投票取纏め等の選挙運動を依頼し、その報酬として一人当り約一千円相当の酒食の饗応接待をなし、

第七、被告人市原正利同鈴木勝は、いずれも、同年四月一二日ごろ、前記八鶴館において、前記桜井熊雄から、右候補者に当選を得しめる目的をもつて同候補者のための投票取纏め等の選挙運動を依頼され、その報酬として供与されるものであることの情を知りながら現金一万円宛の供与を受け

たものである。

証拠の標目(省略)

法令の適用

一、被告人加瀬俊雄に対し、

(一)判示第一、第二、第三、第四の一の各所為につき、

(イ)金員供与又は供与の申込の点は公職選挙法第二二一条第一項第一号刑法第六〇条

(ロ)事前運動の点は公職選挙法第一二九条第二三九条第一号刑法第六〇条

(ハ)右は一個の行為で数個の罪名に触れる場合であるから刑法第五四条第一項前段第一〇条(一罪として刑の重い金員供与又は供与申込罪の刑―罰金等臨時措置法適用、懲役刑選択―を以て処断)

(二)判示第四の二の所為につき

(イ)戸別訪問の点は公職選挙法第一三八条第一項第二三九条第三号刑法第六〇条

(ロ)事前運動の点は公職選挙法第一二九条第二三九条第一号刑法第六〇条

(ハ)右は一個の行為で数個の罪名に触れる場合であるから刑法第五四条第一項前段第一〇条(一罪として犯情の重い戸別訪問罪の刑―罰金等臨時措置法適用、禁錮刑選択―を以て処断)

(三)判示第四の三の所為につき、公職選挙法第一四六条第一項第二四三条第五号(罰金等臨時措置法適用、禁錮刑選択)

(四)以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから同法第四七条本文第一〇条(刑及び犯情の最も重い判示第一の金員供与の罪の刑に法定の加重をなした刑期範囲内で量刑処断)

(五)刑の執行猶予につき、刑法第二五条第一項

(六)訴訟費用の負担につき、刑事訴訟法第一八一条第一項本文第一八二条

二、被告人鈴木栄治郎に対し、

(一)金員供与の点につき、公職選挙法第二二一条第一項第一号刑法第六〇条

(二)事前運動の点につき、公職選挙法第一二九条第二三九条第一号刑法第六〇条

(三)右は一個の行為で数個の罪名に触れる場合であるから刑法第五四条第一項前段第一〇条(一罪として刑の重い金員供与罪の刑―罰金等臨時措置法適用、懲役刑選択―を以て処断)

(四)刑の執行猶予につき、刑法第二五条第一項

(五)訴訟費用の負担につき、刑事訴訟法第一八一条第一項本文第一八二条

三、被告人日東寺俊雄同大木大輔に対し、それぞれ、

(一)金員供与申込の点につき、公職選挙法第二二一条第一項第一号刑法第六〇条

(二)事前運動の点につき、公職選挙法第一二九条第二三九条第一号刑法第六〇条

(三)右は一個の行為で数個の罪名に触れる場合であるから刑法第五四条第一項前段第一〇条(一罪として刑の重い金員供与申込罪の刑―罰金等臨時措置法適用、懲役刑選択―を以て処断)

(四)刑の執行猶予につき、刑法第二五条第一項

四、被告人中嶋与に対し、

(一)判示第五の所為につき、公職選挙法第二二一条第一項第四号第一号(罰金等臨時措置法適用、懲役刑選択)

(二)刑の執行猶予につき、刑法第二五条第一項

(三)追徴につき、公職選挙法第二二四条

(四)訴訟費用の負担につき、刑事訴訟法第一八一条第一項本文第一八二条

五、被告人能勢剛に対し、

(一)金員供与の点につき、公職選挙法第二二一条第一項第一号刑法第六〇条

(二)事前運動の点につき、公職選挙法第一二九条第二三九条第一号刑法第六〇条

(三)右は一個の行為で数個の罪名に触れる場合であるから刑法第五四条第一項前段第一〇条(一罪として刑の重い金員供与罪の刑―罰金等臨時措置法適用、懲役刑選択―を以て処断)

(四)刑の執行猶予につき、刑法第二五条第一項

六、被告人椎名登に対し、

(一)判示第六の一の所為につき、公職選挙法第二二一条第一項第四号第一号(罰金等臨時措置法適用、懲役刑選択)

(二)判示第六の二の所為につき、

(イ)饗応接待の点は公職選挙法第二二一条第一項第一号刑法第六〇条第五四条第一項前段第一〇条(一罪として処断)

(ロ)事前運動の点は公職選挙法第一二九条第二三九条第一号刑法第六〇条

(ハ)右は一個の行為で数個の罪名に触れる場合であるから刑法第五四条第一項前段第一〇条(一罪として刑の重い饗応接待罪の刑―罰金等臨時措置法適用、懲役刑選択―を以て処断)

(三)以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから同法第四七条本文第一〇条(犯情の重い判示第六の二の罪の刑に法定の加重をなした刑期範囲内で量刑処断)

(四)刑の執行猶予につき、刑法第二五条第一項

(五)追徴につき、公職選挙法第二四四条

(六)訴訟費用の負担につき、刑事訴訟法第一八一条第一項本文

七、被告人市原正利同鈴木勝に対し、それぞれ、

(一)判示第七の所為につき、公職選挙法第二二一条第一項第四号第一号(罰金等臨時措置法適用、懲役刑選択)

(二)刑の執行猶予につき、刑法第二五条第一項

(三)追徴につき、公職選挙法第二二四条

(四)訴訟費用の負担につき、刑事訴訟法第一八一条第一項本文第一八二条(但し被告人鈴木勝の単独負担の分については同法第一八二条を適用しない)

を適用する。

別紙

一覧表

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